CPUグリスは代用できる？｜ホームセンター・100均で買える？シリコングリスも

PCで重い処理を行うと、熱を帯びてフリーズしてしまう場合があります。CPUは熱を帯びやすいパーツなので、放熱で冷却をして性能を高めるのは必須です。そこで役立つのは、CPUとCPUクーラーの密着度を上げて冷却効果を高めるCPUグリスです。放熱グリスや熱伝導グリスとも呼ばれます。

CPUグリスは種類が多く、性能や価格もさまざまなのでどれを選べばいいのかわからない方も多いですよね。こちらの記事では、シリコングリス・熱伝導グリスも含めたCPUグリスの選び方やおすすめの商品を紹介します。

さらに、ホームセンター・100均などの購入できる場所や、CPUグリスの代用品についても解説します。これから自作PCを制作しようとしている方・すでに持っているPCのメンテナンスを検討している方は必見の内容です。お使いのCPUに合ったグリスを選んで、PCの冷却性能を高めていきましょう。

CPUは大量の熱を発生させるのにも関わらず、表面積が非常に小さいので、熱暴走させずに動かすにはヒートシンクを上に載せる必要があります。このとき、CPUグリスの1つ目の役割は、ヒートシンクと密着させて放熱性を上げる点です。

ヒートシンクを繋ぐためにCPUの上にグリスを塗りますが、CPUの周りには電子部品があるため、グリスがはみだしてしまうと短絡を起こしてしまいます。そのような理由から、CPUグリスは他のグリスよりも粘性が高くなっています。

折角CPUとヒートシンクを密着させても、グリスの熱伝導性が低いとうまく放熱を行えません。CPUグリスの2つ目の役割はヒートシンクに熱が伝わるようにする点です。熱伝導率を高めるために、銀やダイヤモンドを混ぜているグリスもあります。

純粋なシリコングリスは耐熱性が非常に高いものの、樹脂であるため非常に熱伝導率が低く、そのままではCPUグリスとして使い物になりません。そのため、シリコングリスと呼ばれる物でも、アルミナ粉といった金属が入っていたりしています。

シルバーグリスやダイヤモンドグリスに比べて熱伝導率は低いものの、シリコングリスは非常に塗りやすいため、グリスを塗りなれていない初心者にもおすすめです。

価格が安いですが、熱伝導率が銀に比べると格段に低いため高性能CPUには不向きで、Corei5までの一般的な性能のパソコンに使う方におすすめのグリスです。

シルバーグリスは、シリコングリスに銀を混ぜた物を指し、ダイヤモンドグリスよりかは熱伝導性は低いですが値段が比較的安い点が特徴です。ただし、シリコングリスよりも塗りづらくなるため、グリス塗りに慣れている方向けの製品となっています。

CPUにはグラフィックボードも内蔵されていて、軽めの3Dゲームを行うだけでも大きな熱が生じるため、高い冷却性能が必要です。CPU性能がCorei5程度でも、軽めの3Dゲームを行う方はお金が無くてもケチらずに、シルバーグリス以上のグリスを使うようにしましょう。

研究用のパソコンや高級ゲーミングパソコンには、Corei7やCorei9が搭載されています。特に、オーバークロックに対応した製品に関しては、通常のCPUに比べて処理速度を上げられますが発熱量も大きくなるため、冷却性能がそのまま処理速度に影響を与えます。

ハイスペックPCに関しては、熱暴走を起こして壊れるとまずいので、塗りづらくても熱伝導性の高いシルバーグリスかダイヤモンドグリスを使うようにしましょう。

CPUグリスがCPUからはみ出してしまうと短絡を起こしてしまう可能性があります。また、均等に塗られていないと熱暴走を起こす場合もあるため、注意が必要です。以上の理由から、CPUグリスは他のグリスよりも塗りやすさが重要なポイントになります。

塗りやすさに関しては、粘度の低いグリスの方が均等にグリスを伸ばしやすいため、CPUグリスを使った経験がない方はソフトタイプのグリスがおすすめです。また、樹脂のヘラが付属している製品の方が塗りやすいため、付属品についても確認しておきましょう。

熱伝導性には指標があり、熱伝導率に関してはW/mといった単位で表されます。熱伝導率が大きければ大きいほど、ヒートシンクに熱を伝えやすくなり冷却性能が高まるため、熱伝導率が大きくなるほどCPUグリスとしては高性能になります。

グリスの種類により熱伝導率が異なり、シリコングリスは6W/mから8W/mなのに対し、シルバーグリスやダイヤモンドグリスでは10W/m以上ある製品が多いです。CPUグリスの中には79W/mあるものもありますが、非常に値段が高いです。

熱伝導率の他に熱抵抗といった指標もありますが、薄く塗れば塗るほと熱抵抗を低くできて冷却性能が高まるため、冷却性能を高めるためにも均等に薄く塗りましょう。

CPUグリスの中には絶縁性を持つ製品があり、絶縁性があるとCPUからグリスがはみ出しても短絡しないため、安心してグリスを塗れます。シルバーグリスは導電性の物質が混ざっているため、絶縁性のCPUグリスは存在しません。

一方で、シリコングリスやダイヤモンドグリスの場合は、非導電性の物質を混合する場合が多いため、絶縁性を持つCPUグリスが存在します。短絡によるパソコンの故障が心配な型は、絶縁性のCPUグリスがおすすめです。

CPUグリスは銀やダイヤモンド等の高価な材料を利用しているため、他の種類のグリスに比べると内容量が少ないです。CPUグリスの中には内容量が1gしかない製品もあり、価格は安いですが5回程度しか使えないのが欠点です。

あまりグリスの塗り替えを行わない方は、内容量が1gでもあまり問題がありません。しかし、グリスの塗り替えを頻繁に行う方は、内容量が4g以上の製品をおすすめします。

グリスを塗るためには、まずパソコンの分解を行ってCPUに触れられる状態にしておく必要があります。パソコンの分解に関しては間違った方法で分解してしまうと、使い物にならなくなる場合があるため、パソコンの正しい分解方法についても説明します。

デスクトップパソコンの場合は、ノートパソコンよりも分解が簡単に行えて、ケース蓋の取り外しとファンの取り外しを行うとCPUに到達できます。

ケースの取り外しについては、プラスドライバーを用意して箱の外側に付いているネジを取り外せるようになります。次に、CPU上のファンに関しては、CPUの周りに付いているネジを取り外すと、CPUがむき出しになります。

この時、CPUグリスを塗ってもファンの部分にほこりが溜まっていると、十分な冷却性能が得られない場合があるため、エアダスターを使ってほこりの除去も行いましょう。

ノートパソコンの場合はデスクトップパソコンよりもはるかに分解が難しくなり、分解すると保証対象外になる製品が多いため、分解はおすすめできません。ただし、ノートパソコンにもゲーミングPCがあるため、ノートパソコンの場合の分解方法も説明します。

まず、始めに外側に付いているネジをプラスドライバーですべて取り外します。デスクトップパソコンよりもネジの数が多いので、取り外すのに時間がかかります。ネジが外れたら次はピンセットを使って隙間を作りケースを取り外しますが、なかなか分解できないため大変な工程です。

ようやくケースを取り外せたら、最後にCPUファンの掃除と取り外しを行います。ノートパソコンの分解は非常に大変なので、時間に余裕があるときに行いましょう。

まずは固まったグリスを取り除き、CPUの表面をまっさらな状態にする必要があります。金属製のヘラを使ってしまうと短絡してしまう危険性が高いため、樹脂製のヘラを使って固まったグリスを取り除きましょう。

固まったグリスを取り除いたら、グリスをチューブから出してCPUの上に適量乗せます。この時、CPUの上にまんべんなく乗せてしまうと広げた時にはみ出てしまうため、米粒大の大きさになるようにします。もし塗りすぎた場合は乾いた布などで拭きとりましょう。

CPUグリスを出した後はヘラを使ってグリスを広げますが、この時にグリスがはみ出てしまうと回路が短絡してしまう危険性があります。グリスを塗るのに慣れていない方は、絶縁性のグリスを利用するか、マスキングテープを利用してはみ出すのを防ぎましょう。

最後にグリスを均一に伸ばしたらヒートシンクをCPUの上に乗せます。最後の手順で油断してヒートシンクを滑らせると、グリスがはみ出て短絡する危険性があるため、最後まで気を緩めないようにしましょう。

CPUにグリスを塗る手順が完了したら、後は分解したパソコンを元に戻して、熱暴走しないかどうかを確認します。

CPUグリスは、一度塗っても長期間使用して塗り替える場合などで、除去する必要が出てきます。除去は誤った方法を行うと故障する恐れがあるため、以下の記事で解説する除去方法と注意点をしっかりと確認してください。

CPUグリスは一度塗ったら基本的に除去する必要はありません。しかし、中古パソコンや長期間使用したもので熱がこもるといった症状がある場合は、除去して塗り直す必要があります。さらに、「冷却クーラーを交換したい」「高性能グリスに変えたい」といった場合も除去が必要なため、以下の方法で行ってください。

• グリスの状態が柔らかい場合

ティッシュ（可能であればキムワイプなどの不織布）でふき取ってください。

• グリスが固化している場合

数年経過したグリスは固化しているため、IPA（イソプロピルアルコール）などのアルコールで落とす必要があります。しかし、IPAはグリスが溶ける前に乾く・毒性があるため、灯油がおすすめです。灯油をティッシュなどに染み込ませてふき取ってください。

灯油を使った除去方法を上述しましたが、その際は灯油をCPUに直接かけないてください。灯油により溶けた伝導性の物質がヒートスプレッダの隙間から基盤に入り、内部でショートする恐れがあります。

また、接点回復剤やCRC（クレ556）を使った掃除方法の情報も出回っていますが、この方法はおすすめできません。接点回復剤は熱伝導成分を配合している製品もあり、CPUがショートする可能性があります。また、CRCもプラスチックがもろくなる成分が入っているため、使用は避けた方が無難です。

CPUグリスは、カインズなどのホームセンターでも販売していますが。取り扱っているのは潤滑油として使うグリースのみのため注意してください。また、費用を抑えたい方は100均で売っているかも気になるところですが、残念ながら100均ではCPUグリスは販売していません。

CPUグリスの主な購入先は、ヨドバシ・ヤマダ電機・ケーズデンキなどの家電量販店・パソコンショップになります。直接店舗に行けなくても大手の家電量販店・パソコンショップはオンラインでも購入可能です。さらに、Amazon・楽天でも手軽に購入できるため、まずは検索してみてください。

塗ったグリスは何年もつのか、明確な寿命はありません。しかし、経年劣化していくため2年前後で塗りなおす方が多いです。塗った直後は抑えられていたパソコンのファンの大きな音や熱がこもる現象が、気になるほどの症状になってきたら寿命の可能性があります。そんなときはCPUを確認して、必要に応じて塗り替えましょう。

CPUグリスに使うお金を節約したい人は、呉工業のシリコングリースメイトペーストを利用する方法があります。自動車用のグリスであるためそこまで熱伝導性は高くありませんが、容量が50gと多くて割安なため、実際にCPU用のグリスとして使っている方がいるようです。

自動車用のシリコングリスがない場合は、シマノの自転車用グリスで代用する方法もあります。しかし、冷却性能が低い上に粘性が高くて塗りづらいため、CPU用のグリスとしてはあまりおすすめできる製品ではありません。

スティックのりはのりを少しずつ出せるため塗りやすいうえに、冷却性能も十分にあります。ただし、成分の種類によってはCPUを腐食させる可能性があるため、のりの成分について確認を行うようにしましょう。

キンカン特有の臭いが生じてしまう難点がありますが、スティックのりと同様に冷却性能と塗りやすさに優れています。ただし、粘性が非常に低くあっという間にはみ出してしまうため、CPUグリスを塗るのに慣れていない方にはおすすめできません。

ワセリンは石油から精製された粘度が高い保湿剤です。粘度があり乾きにくいため、緊急時のCPUグリスの代用品として使用できます。使用するときには綿棒などの先端に少量つけて、CPUに満遍なく塗りましょう。またワセリンは体温で液状になるので、高音になりがちな重いゲームをするときには注意してください。

アルミホイルもCPUグリスの代用品として使用できます。どこの家庭にもあるので手軽に使用できるのが魅力です。アルミホイルは電熱シートの代用品になり、簡単に設置できるうえに効果があるのがメリットです。

その他の代用品としては歯磨き粉やマヨネーズ等がありますが、CPUを錆びさせたり傷つけたりしてしまうため、CPUグリスとしてはおすすめできません。

CPUグリスで最も重要な性能は熱伝導性ですが、一部の製品を除いては大きな差がないため、ハイエンドCPUでない限りはそこまでこだわる必要はありません。CPUグリスははみ出てしまうと短絡してしまうため、粘度が低くて絶縁性のある塗りやすい製品がおすすめです。